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一瞬だからこそ

今やっている写真展をご覧になったお客様からお手紙をいただきました。1952年、直方駅前に位置する圓徳寺の移転工事が行われた時に撮られた写真。そこには境内で遊んでいた子供達が皆で写っています。
お手紙を下さったのは、その写真に写っているという男性Kさん。弟さんもその写真に写っていて、写真のことは弟さんから聞いたそうです。
お手紙には60年前の思い出が綴られていました。
写真はまだまだ気軽に撮れるような時代ではなく、Kさんにとっても貴重な一葉。
60年前の自分と出会い、思い起こされるこれまでの歩み。
写真に写っているのは、ほんの一瞬だけれど、その前後にある長い長い時間を、被写体となった人や風景は記憶していて、たった一葉の写真が引き金となってその記憶を紐解いて行く…アルバム写真の醍醐味こんなところにあるのだろうと、手紙を読んでいて感じました。
同時に、被写体ではない他人が見ても色んな発見があるし、自分の思い出と重なることがあります。人の過去の記憶は膨大で、とっくに忘れ去られていたような思い出が、ふとしたきっかけで蘇ることがあります。写真はそのきっかけとして優れたメディア。
写っているのがほんの一瞬だからこそ、その周りの時間を補おうと、鑑賞者の記憶の触手が自然と伸びるのかもしれません。
by nogataartmuseum | 2012-07-20 00:23 | スタッフのひとりごと